心理的瑕疵物件とは?具体例や不動産会社の告知義務について解説

公開日:2021年2月1日

心理的瑕疵物件って何?入居しても大丈夫?

心理的瑕疵1

賃貸物件の備考欄などに「告知事項あり」と書かれているのを見たことがある人も多いのではないだろうか。「告知事項」とはその名の通り、不動産業者が物件の借主や買主に知らせるべき事項のこと。その大半を「心理的瑕疵(しんりてきかし)」に関する内容が占める。

心理的瑕疵とは、物件の借主や買主にとって心理的抵抗が生じるおそれがある欠点のことを指す。では心理的瑕疵の具体的な例や、当てはまる条件とはどのようなものだろうか。

ここでは心理的瑕疵があるとされる物件の特徴や不動産会社の告知義務の有無、メリットなどについて解説する。心理的瑕疵物件について興味がある人はぜひ参考にしてほしい。

心理的瑕疵物件とは

落ち込んでいる女性のイメージ
心理的瑕疵物件は受け手の感情が優先される

「瑕疵(かし)」とは、しかるべき品質や性能が欠けているという意味の言葉で、「欠陥」と類義語と考えると良いだろう。

つまり「心理的瑕疵物件」とは、住む側が心理的・精神的な問題で苦痛を感じる可能性のある物件のことを指す。

心理的瑕疵というものが有名になったのには、事故物件サイト「大島てる」によるところが大きい。自由に投稿できるこのサイトにあっという間に情報が集まり、注目を浴びたのである。ただし、中には嫌がらせのような投稿もあるので、すべてを鵜呑みにするのはやめておこう。

なお、「家が傾いている」「雨漏りがしている」といった物理的な不具合のことを「物理的瑕疵」、「近所にある工場の音がうるさい」など周辺環境に関する欠点のことを「環境的瑕疵」と呼ぶ。これらは「心理的瑕疵」に該当しない。

心理的瑕疵物件の例

心理的瑕疵の範囲は、受け止める側の主観によっても左右される。極端にいえば「事件・事故が原因で死者が出た物件でも気にしない」という人もいれば、「近所にある施設のせいで怖い思いをする」という人もいる。

ここでは、心理的瑕疵物件として認められることが多い主な例を4つ紹介しよう。

心理的瑕疵物件の例①:事件・事故により、物件内で人が亡くなった

残虐な事件・事故によって人が亡くなっている物件や、自ら命を絶つ事件が発生した物件は、心理的瑕疵物件の最たる例として挙げられる。一方で、ごく自然な病死・自然死の場合は心理的瑕疵が認められない。

ただし自然死だとしても、死後すぐに発見されず害虫が発生したり、強い臭いが物件に染みついたりした場合は心理的瑕疵物件となる場合がある。基本的に「特殊清掃」が実施された物件は心理的瑕疵物件になると覚えておくと良い。

心理的瑕疵物件の例②:事件・事故により、周辺で人が亡くなった

上記のような出来事の起きた場所が、同じ室内ではなかったとしても、心理的瑕疵が認められるケースもある。たとえばマンションの隣室や向かいの部屋で事件・事故が起きていた場合、戸建てなら近隣で凄惨な事件が発生していたといった場合だ。

心理的瑕疵物件の例③:周辺に嫌悪施設がある

多くの人が敬遠するような施設のことを「嫌悪施設」という。どの施設が該当するかは主観的な判断や時代によっても異なるが、たとえばお墓や刑務所、原子力発電所といったものが嫌悪施設とされる場合が多い。また、名高い心霊スポットから近いといった科学的根拠がない問題だとしても、心理的瑕疵物件として扱われることがある。

心理的瑕疵物件の例④:周辺に指定暴力団等の事務所がある

物件の近くに指定暴力団等、反社会的勢力の事務所がある場合も、心理的瑕疵が認められる。しかし、これらの場所は公にされておらず、近くにあっても気がつかないケースも少なくない。

心理的瑕疵物件の判断方法は?不動産会社に告知義務はあるのか

不動産会社(宅地建物取引業者)は借主に対して、物件に心理的瑕疵があるということを知らせる告知義務を負っている。この告知義務は、宅地建物取引業法において定められている。契約に関わる「重要事項説明」の際、不動産会社は借主に対し、心理的瑕疵物件である旨を盛り込んだ書面を交付し、口頭で説明しなければならないのだ。

不動産会社側が事故物件だと把握しているにもかかわらず、告知せずに借主と契約を結んだ場合、賠償金の支払いが発生することもある。

心理的瑕疵の要因によって判断せざるを得ないことが多いものの、告知義務に関する一般的な目安は以下のようになる。

事件・事故からの経過年数何人目の入居者までなのか
2~3年1人目

上記のように、2~3年程度経過すれば告知義務がなくなるという解釈が一般的だ。しかし、世間的に問題となった事件などは数十年前などでも告知義務が発生することがある。

告知義務が発生する基準は?

国土交通省は2021年10月「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定。物件の室内や共用部分で人が亡くなった場合、不動産会社(宅地建物取引業者)が負う告知義務の範囲について判断基準が定められた。これにより、安心して不動産取引を行えるようになるだろう。。

ガイドラインでは、物件で起きた「人の死に関する事案」が借主・買主の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、原則、不動産会社から借主・買主へ告知しなければならないと定められた。

一方、過去の裁判例や取引実務などを踏まえ、「告知しなくてよい事例」を以下の通り定めている。過去に起きた出来事を正確に伝えてもらえない可能性があるため要注意だ。

告知義務の対象外①:自然死・日常生活の中での不慮の死が発生した物件

病死または、日常生活の中での不慮の死(転倒事故など)が発生した場合、不動産会社は入居者に告知する義務はない。

ただし前述のとおり、上記の場合でも死後すぐに発見されずに特殊清掃や大規模リフォームが必要になったような事例では告知義務の対象となる。

告知義務の対象外②:人が亡くなってから希釈期間の3年が経過した物件

賃貸物件においては、事件・事故による死亡だとしても、それから3年が経過すれば告知義務はないとされた。

ただし事件性・周知性・社会に与えた影響等が大きく、風化しにくい事件・事故の場合は心理的瑕疵が認められるため、3年を過ぎた後も告知義務が生じる。

告知義務の対象外③:隣接住戸・通常使用しない共用部分で人が亡くなった事件

マンションの隣室、戸建てのお隣さん、非常階段など通常は使用しない共有部分で人が亡くなった事件にも「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」の告知事項には該当しない。どうしても気になるという場合は、周辺で過去に起きた事件・事故の情報を自分で調べる必要がある。

補足すると、玄関までの廊下やエレベーター、ラウンジなどの共有スペースに関しては「通常使用する共用部分」と認められる確率が高い。これらの場所で発生した事件・事故に関しては、人通りの多い・少ないや、利用状況の有無とは無関係に心理的瑕疵が認められるだろう。

心理的瑕疵物件に住むメリット・デメリット

心理的瑕疵2

心理的瑕疵物件に住む最大のメリットは、家賃の安さだ。物件によってどれくらい安くなっているかは変わるが、周辺の相場と比べて家賃が安くなることも多い。

同じような距離や間取りの物件で、近隣の相場より30%以上家賃が安くなる例もある。部屋で起きた過去の事故や事件について特に気にならないという人ならば、低家賃で好条件の物件に住むことができる。

また、競争率の低さもメリットとなる。引越し繁忙期である2~3月において、人気の物件はすぐになくなってしまう。そんな時期でも心理的瑕疵物件ならば、比較的残っていることも多い。

ただし、実際住んでみたら、やはり気持ちが悪くなってしまったと思う方も少なくはない。清掃やリフォームがされているとはいえ、自殺や殺人があった場所で生活をするのだから、不安になってしまうときもあるだろう。

やはりここに住みたくないと思ったとしても事前に心理的瑕疵について告知されているのならば、契約の取り消しや損害賠償請求はできない。

再び引越しをするとなると、費用はもちろん、労力もかかってしまう。そういったデメリットも把握したうえで部屋を借りる必要がある。

心理的瑕疵物件に住むメリットとデメリットをまとめると、以下のようになる。

  • メリット
    • 相場よりも家賃が安い。
    • 競争率が低いため入居しやすい。
  • デメリット
    • 説明されている場合、契約の取り消し・損害賠償は不可。

心理的瑕疵物件と知らずに契約してしまった場合は?

図らず心理的瑕疵のある物件を契約してしまった場合、消費者契約法にもとづいて契約を取り消すことができる。あるいは民法にもとづいて契約を解除し、損害賠償請求をすることも可能だ。

契約を取り消すには、事前には知らなかったこと、知っていれば契約しなかったことを証明する必要がある。事前に心理的瑕疵がある物件か否かを不動産会社にしっかり確認して、その結果を記録として残すようにしておこう。

心理的瑕疵物件の意味を知ったうえで入居を検討しよう

心理的瑕疵物件について2021年にガイドラインが設けられたものの、その判断についてはあいまいな部分が多く、事故や事件の発生から時間が経過すれば告知されない場合もある。

心理的瑕疵があるかわからなかったり不安要素があったりする場合は、不動産会社に事前に確認することをおすすめする。好みの物件を見つけるためにも、疑問や不安に思った点があれば遠慮なく聞いてみよう。

文=CHINTAI編集部

2022年2月加筆=CHINTAI情報局編集部

CHINTAI編集部
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