【お風呂の疑問】最近は見かけることも珍しい?「バランス釜」について聞いてみた

公開日:2016年4月28日

最近ではあまり見かけない、バランス釜ってどんなもの?

「バランス釜」と聞いてピンと来る人はどれくらいいるだろうか? 浴槽の横に給湯器が設置されるのが特徴の風呂釜のことだが、使ったことがない人も多いだろう。最近は見かけることも少なくなったが、古いアパートなどではまだ現役で使われているそうだ。

ガスターがほかのメーカーに先がけて開発したバランス釜
ガスターがほかのメーカーに先がけて開発したバランス釜

あまりお目にする機会がないが……、使い心地はどうなのだろう?バランス釜を製造しているガス器具メーカー、ガスターの広報担当に話を聞いた。広報担当者のインタビューを交えながら、バランス釜のメリット・デメリットや使い方を詳しく解説していこう。

バランス釜とは

バランス釜といわれても、イメージがまったく浮かばない人もいるだろう。バランス釜は、浴槽の横に設置された給湯器でお湯を沸かすお風呂のことだ。普及しはじめたのは高度経済成長期の頃。首都圏を中心に建設された団地で設置されるようになった。一般家庭に広まったが、今ではあまり見かけなくなった。

バランス釜とはどのような製品なのかを担当者に詳しく聞いてみよう。

「バランス釜は、家の外の空気を使ってガスを燃焼し、排気ガスを外へ排出する風呂釜のこと。実は、1965年にバランス釜が登場する前は、CF釜という浴室内の空気を使って燃焼し、それを外へ排出するものだったため、排気の逆流によって一酸化中毒事故が起こることも……。その点、バランス釜は吸気と排気のバランスが良いので、そういった事故が起こる可能性が減りました。また、その給排気のバランスの良さが名前の由来でもあるのです」

バランス釜が登場する前は、危険な事故が発生するCF釜が設置されていた。その後、より安全なバランス釜が採用され、家庭のお風呂場で活躍するようになったのだ。

バランス釜の仕組み

気になるバランス釜の仕組みだが、どのようにお湯を沸かしているのだろうか?

バランス釜は浴槽の横に給湯器が取り付けられている。その給油機には給気口と排気口が付いており、給気口から外の空気を取り込んでガスを燃焼させてお湯を沸かしている。燃焼時に発生した空気は排気口から外に排出される。

浴槽にも2つの穴があいており、そこから伸びるパイプは給湯器につながっている。下の穴から浴槽の水を吸い込み、給湯器で温める。上の穴から温められたお湯を浴槽に戻している。これを継続しながらお湯を沸かしているのだ。

バランス釜の登場以前は、浴槽がない家が多かった

バランス釜が普及する前は、お風呂がない家庭が大半だった。1930年頃に給湯器が販売されたが、家庭のお風呂に使われるほどには広まらず、多くの人は銭湯に通っていたのだ。

戦争が終わりを迎え、人々の生活に活気が出はじめた1950年代にお風呂が付いた集合住宅が建てられるようになる。しかし、その頃のお風呂は煙突が付いたCF釜と呼ばれる製品で、事故が多く安全性が低かった。その後、安全性の高いバランス釜が登場し、一般家庭にお風呂が導入されるようになったのだ。

バランス釜はその後、どのような変遷があった?

昔ながらのバランス釜
同じバランス釜でも昔より使いやすくなっている

「登場した当初は、手動のハンドルを回すことで着火させていました。そのため、うまく着火できないことも。その後は電池式が開発され、使いやすく変化しました。また、安全装置が備わり、空焚きによる不完全燃焼を察知できるようになりました。改良を重ね、より安心して使えるようになっています」

バランス釜は品質の改善が進み、使いやすさが増しているようだ。

バランス釜を使うメリット・デメリット

バランス釜を使用するメリットとデメリットはどのような点が挙げられるのだろうか?担当者の方が考える、バランス釜を使う際のメリットとデメリットを聞いてみた。

「電気を使わないため、停電が起こったときにもご利用いただけることがメリットです。デメリットは、給湯器の場所を確保するため、浴槽の横に約25~30センチの幅が必要になり、浴槽の幅を広く取れないことかもしれません」

浴槽が小さめであるのはデメリットだが、地震や台風などの災害で停電になったときにも使えるのは嬉しいところだ。バランス釜のメリット・デメリットをそれぞれ確認していこう。

バランス釜を使うメリット

担当者のインタビューにも出てきたように、停電時に使用できるのは最大のメリットといえるだろう。現代の生活は大部分を電気に依存しており、停電すれば立ち行かない。電気の供給なしに普段通りに過ごすのは困難だ。しかし、バランス釜は電気に頼らない仕組みであり、停電に関係なく利用できる。

また、バランス釜は追い焚きが可能だ。冷めてしまっても再度お湯を沸かせるのは便利な機能だといえる。さらに、バランス釜はシャワーだけの使用もできるため、あまり湯船に浸からない人にも嬉しいポイントだろう。

バランス釜を使うデメリット

バランス釜を使用するときのデメリットは、担当者が答えていたように浴槽がせまいところだ。バランス釜の給湯器の大きさは約30cm。給湯器は浴槽の横に設置する必要がある。そのため、必然的に浴槽が小さめになるのだ。大きな浴槽を希望している人には、浴槽の広さが物足りなく感じるかもしれない。

バランス釜はバーナーの容量が小さく、シャワーの水圧が弱いという点もデメリットだろう。しかし、シャワーヘッドを節水できるタイプに交換すると、水圧が改善できるといわれている。気になる場合には対策可能だ。

お湯が冷めやすいのもデメリットのひとつ。バランス釜は外気の影響を受けやすく、保温性が低い。とくに冬場は外の気温が低いため、お湯が冷めやすくなるのだ。

さらに、バランス釜は掃除がしにくいといわれている。お風呂場に浴槽と給湯器を設置しているため、隙間ができて湿気が溜まりやすい。隙間は掃除がしにくく、カビも生えやすいのだ。どうしても汚れが取れないときにはプロに頼む必要があるだろう。

いまだに設置している物件もありますが、バランス釜の現在の利用状況は?

かつては多くの家庭で使われていたバランス釜だが、今でも使用されているのかは気になるところだ。

「新築の家に設置することはもうほとんどありません。アパートや団地などでバランス釜を使っていて、調子が悪くなって取り替えることが多いです。弊社だけで年間約7万台を販売しているので、ほかのメーカーも合わせると、年間約10万台が販売されている計算になります」

屋外設置型の風呂給湯器や暖房機能付きの高機能タイプが普及し、バランス釜の新規設置はないという。新たにバランス釜を設置する物件がほとんどないとすれば、今後はさらにバランス釜の数は減っていくだろう。

バランス釜の使い方を紹介!

バランス釜を上から見た図。右側が給湯器
バランス釜を上から見た図。右側が給湯器

バランス釜の仕組みやメリット・デメリットをご紹介した。ここからは、気になる使い方を説明しよう。一見難しそうだが、手順に沿って進めていけば問題なく使えるはずだ。

バランス釜はお湯を沸かすときにガスを燃焼させるので、火を使用する。そのため、空焚きをしないように、必ず水を張ってから沸かすようにしよう。故障の原因にもなるので注意が必要だ。現在、一般的に使われている浴槽のお湯張りとは異なるため、バランス釜を使用する際は事前に使い方を確認して適切に扱おう。

①ガスの元栓を開く

浴槽に水を溜めたら、バランス釜のガスの元栓を開く。ガスで沸かすため、元栓を開く必要があるのだ。

②つまみを回して点火する

給湯器にはガスコンロのようなつまみが設置されている。点火する際には、そのつまみを調整しよう。「止」の位置にあるつまみを押さえながら回して、「口火」に合わせると点火できる。

③点火を確認する

点火できたかどうかを必ず確認しよう。点火していない状態で行うと、ガス漏れを起こしてしまうのだ。点火を示すランプが点灯しているかのチェックは忘れずに行うことが重要だ。点灯しないタイプであれば、点火窓をのぞき火が付いているのを確認できれば、点火できている。

④つまみを「給湯・シャワー」に合わせて使う

点火ができれば、つまみを「給湯・シャワー」に合わせる。給湯かシャワーの選択は出水レバーで行う。

バランス釜は20〜40分程でお湯が沸く。追い焚きするにはつまみを「追い焚き」に合わせると、再度お湯が沸かせる。そして、空のまま追い焚きしないように気をつけよう。空焚きをしないことや、着火しているか確認すること、使用後は元栓を閉めることなど、注意点に気をつけて安全に使うことが何より重要だ。日々の掃除やメンテナンスも忘れずに行おう。

バランス釜がある物件は少ない!見つけたらレアかも

公団住宅とともに全国に普及し家庭を支えていたバランス釜だが、現在ではその数が激減。給湯式のお風呂が一般的になり、新規で設置されるバランス釜はほとんどない。もし物件を探しているときに、バランス釜に出会えればかなりレアケースだろう。

バランス釜の物件は家賃が安く設定されている場合が多いため、お得に部屋を借りられる可能性が高い。手間を惜しまずにガスでお湯を沸かしてみたい人や、料金重視の人はバランス釜を検討してみるのもいいだろう。レトロな雰囲気で味のあるバランス釜のお風呂で、のんびりと湯船に浸かってみては?

(松尾奈々絵/ノオト)

2021年6月加筆=CHINTAI情報局編集部


リンクをコピー
関連記事関連記事